2018年5月8日火曜日

平成30年度 前期高段者審査論文「拳法会教育論と伝統武道」 参考資料

 東北学院大学教授 黒須 憲先生のFBから
私の担当科目に「スポーツ文化論」があります。専門は武道文化論、弓道文化論だと思っています。まぁ!あたいした業績はないですが。チョコッと感想
 今日のスポーツは野球やサッカーをさし,19世紀後半ヨーロッパとアメリカ社会が生み出したものです。近代スポーツmodern sportと呼び、ヨーロッパ近代が生み出したスポーツの総称で、ヨーロッパ近代の合理主義的な発想によって整備・統一された運動文化です。すなわち,国や民族や宗教を超えてルールや施設や用具やマナーを共有するスポーツで、オリンピックやワールドカップ種目、「国際組織を持ち世界共通のルールでおこなわれるスポーツ」を国際スポーツ(International sports・World sports)と定義しています。
しかし、現在おこなわれている国際スポーツの殆どは民族スポーツから発展したもので、イギリス,イタリア,フランスの民族スポーツであったサッカー,アメリカの民族スポーツであったバスケットボールやベースボール,日本の柔道が「JUDO」となりオリンピックやワールドカップ,世界選手権大会がおこなわれるようになりました。
 スポーツは身体運動文化であり、ある一定の身体運動が文化的内容を持ち社会的に認められ、アレン・グットマンが主張した7点の特質を備える様になると「近代スポーツ」と呼ばれるようになります。そして勝敗を争うスポーツを「競技スポーツ」と言います。
 しかし、これがスポーツのすべてではありません。「WorldSports」に対して「EthnicSports(民族スポーツ)」があり「CentralSports」に対して「MarginalSports(周縁スポーツ)」、「IndustrialSports」に対して「VernacularSports(土着スポーツ)」があります。スポーツを一つの文化現象として捉えた場合,いわゆる「中心」を形成するスポーツ文化と「周縁」を形成するスポーツ文化に大別することができます。中間に様々な色模様をなすスポーツ文化が散在し、「中心を」志向しそこに位置づけられるべき条件を満たしているスポーツをCentralSportsと呼び。OlympicSports,や競技スポーツ(GameSports)です。IndustrialSports(産業的)とはルールによって施設・用具プレイの仕方やマナー服装規格統一され、大きな競技場、大観衆興行が可能で「工業化」「産業化」「組織化」され近代化路線を受け入れたスポーツです。ルールを成文化し、施設・用具を規格化し、いつでもどこでも、誰でも同じ条件で楽しむことが出来るSportsです。反対にスポーツの近代化を拒否し,または、されたグループをMarginalSports(周縁)またはVernacularSports(土着的)と呼びます。むしろこれらのスポーツのほうが何倍も多いと言えるでしょう。
 以前調査した弓道実施者の指向性の結果によると日本人は,勝利や技術の向上を望んでいるが,ヨーロッパ人と比較するとそれほど強くはなく、人間形成指向性が最も強かった。
 ヨーロッパ人弓道家は,勝利よりも技術の向上や習得を強く望み,人間形成は重要だとは思っているが,日本人,外国人剣道家より指向性は弱かった。
ヨーロッパ人弓道家や外国人剣道家は,試合での勝利より技術の習得や日本文化の習得,人間形成を求めているといえます。日本人もヨーロッパ人も弓道に対して人間形成的な効果を求めている事が解りました。しかし,日本人は試合での勝利や段位を求める事が中心であって,その目的のために技術の修練をしている事が明らかになりました。それに対して外国人は,弓道は日本の伝統文化であり,試合や段位よりも第一の目的は技術の習得であり,それは日本文化の習得であると考えている事が解りました。試合での結果や,段級はそれに付随して得られ物として理解しているようです。海外で弓道は,日本文化の一つEthnicSports(民族スポーツ)であると認識されているのでしょう。
現在,日本の武道は国内のみでなく他の国々でも愛好者を増やしている。弓道も例外ではなく、ドイツ,イタリア,フランス,イギリス,スイス,オーストリア,オランダ,フィンランド,デンマークなどのヨーロッパ諸国、台湾、マレーシア、オーストラリアなどで実践されている。欧州における弓道は1936年にドイツ人オイゲン・ヘリゲルによって紹介され,以来日本の弓道に対する関心が高まり,1981年にはヨーロッパ弓道連盟が結成された。ドイツでは国内各地に弓道クラブがあり,独自に講習会や合宿,親善試合,公式試合がおこなわれ,他のヨーロッパ諸国との交流も盛んでヨーロッパ弓道のリーダー的な役割を果たしています。国際弓道連盟(略称:国際弓連)International Kyudo Federation(略称:IKYF)が2006年5月に設立され,国際大会なども開かれ、第3回大会が今年日本で開催されました。
柔道は武道の中でいち早くオリンピック種目となり,国際スポーツとして確立しました。しかし,その反面,カラー柔道着や有効,効果,指導、ビデオ判定など,本来,日本柔術にはなかった規則やルールが適用され,嘉納治五郎が学んだ天神真楊流柔術や起倒流柔術とは全く異なる物になってしまいました。「JUDO」という,新たな競技スポーツに変化した。そのような変化を嫌った,剣道は世界普及を進めながらもオリンピックに加わろうとはしていません。空手は,競技スポーツを目指す連盟とあくまでも武道にこだわる協会に別れ,組織が統一してこなかったが、2020年東京オリンピック種目として決定されました。唐手が空手となり「KARATE」となったとき、どの様なスポーツに変化するのか楽しみです。
 武道は日本の伝統的Sportsといわれているが、実際にはその伝統の多くは近代に作られた物です。周知の事実ですが、弓道でも衣装、稽古着に足袋、または射術、正面打起し、射礼、体配、そして段位制度、又は思想、歴史までも作られたmodern(近代)が多いといえます。
 人々はスポーツ選手を応援し活躍を望む。メディアは,試合の結果や様子を伝え,我々に感動と興奮を伝えてくれます。民族スポーツが国際的に競技化するには,共通ルールにし、多くの独自文化を捨てなければなりません。運動文化はその時代時代の要請と共に変化するものですが,先人達によって長い時間を掛け蓄積されてきた文化財を国際化という名の下に消滅させて良いのでしょうか。
 国体改革の議論の中でも,「オリンピック競技であらざれば,スポーツでなし」との風潮があり,オリンピック種目でないスポーツは「国際性がない」として除外の対象になっています。高速交通手段と情報網の発達により世界が狭くなり,文化の共有化と平均化が進んでいます。「民族」という固有のものを守り続けることは難しい事かもしれません。だからこそ,改めて民族スポーツについて考え直す必要があるのではないでしょうか。 
 今回、外国人弓道家と接し、甲冑要前射術を稽古し、スポーツ文化論の講義をし、空手の試合やルールを学び、シコふんじゃったの映画を見、諸々感じたことを書きました。
思った事、感じた事、考えている事を、うまく文章にできなくなってきました。惚けてきたことをつくづく感じます。

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良い人間は、早くなくなるというが!

 名城大学剣道部後援会の梅田泰史元会長(1年後輩)に引きつづき同輩の関本雄気満君が逝去した。後援会を隆盛に導いた梅田元会長、東海団体、個人を優勝に導いた関本くん!  残念ですね。